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本、展覧会、映画、ダンス・演劇のパフォーマンスなど。文学、美術などの芸術、ヨーロッパ、英語に加え、フランス語や中国語、およびその文化にも興味がある。
by cathy_kate


『視覚論』 ハル・フォスター編、榑沼範久訳

視覚論 (平凡社ライブラリー (608))
ハル・フォスター / 平凡社

久々に論文っぽいものを読んだ。無理せず、適当に読み進めさせてもらいました。

ニューヨークで行われたシンポジウムでの、5人の学者による発表内容と、ハル・フォスターの序文、それに全体討議の記録を収める。

ロザリンド・クラウスの「見る衝動(インパルス)/見させるパルス」―ピカソの「ヴァリエーション」の考察など―と、ノーマン・ブライソンの「拡張された場における<眼差し>」―サルトルと西谷啓治の「主体」の捉え方の比較など―がおもしろかったかなあ。

絶対的に信頼できる自己なんてない?「そのもの」は捉えられるか?他のものとの「差異」を通してだけしか「そのもの」は表せない…。むかーし、ちらりと触れた哲学を思い出した。‘Visuality’を論じる以前の段階かもしれませんが。

「見る/見られる」を考えることは、芸術作品を論じる際はもちろん、「存在」自体や、人間のコミュニケーションを考える礎やきっかけにもなり得る。いろんな広がりや可能性を秘めていそうな「視覚論」。私はまだその入口にも入れていないかもしれませんが、まあぼちぼち…。

‘Vision and Visuality: Discussions in Contemporary Culture’
edited by Hal Foster (The New Press, 1998)
by cathy_kate | 2008-03-30 00:08 | 第一幕 本
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