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本、展覧会、映画、ダンス・演劇のパフォーマンスなど。文学、美術などの芸術、ヨーロッパ、英語に加え、フランス語や中国語、およびその文化にも興味がある。
by cathy_kate


『ジェリーフィッシュの恋(Yes or No, So I Love You)』 サラサワディー・ウォンソムペッ監督

2010年タイ。
第3回アジアンクィア映画祭(Asian Queer Film Festival 2011 / AQFF)の上映作品。

出演:スチャーラット マーナイン(Sucharat Manaying、愛称Aom<オーム>)、スパナート ジッタリーラー(Supanart Jittaleela、サイトによって別表記=Supanat Jittaleela、愛称Tina<ティナ>)
(※タイの人の本名って長いから、覚えやすいニックネームを使っているのでしょうか? 外国人向けなのか、タイ国内でも使っているのかわかりませんが)

バンコクの名門大学に通う都市部の中流家庭出身の女子大生パイは、かわいくて勉強熱心だけどちょっと態度が大きい。ボーイッシュな女の子ばかりを好きになる寮のルームメイト、ジェインに少しうんざりして部屋替えを申し込む。
パイは保守的な母親の影響で、レズビアンやゲイの友達と仲良くしながらも、自分は同性愛になんてかかわりたくないと思っている。しかし、新しいルームメイト、キムは男の子に見える豊かな農家出身の女の子だった。最初は彼女を遠ざけようとするパイだったが、植物を大切に育て、料理とビデオゲームと音楽が好きで、優しく穏やかで自然体のキムに次第に心を開くようになり――。

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最高にキュートな映画! 主人公2人が見た目にもものすごくかわいいし(キム役のティナはかっこよくもある)、パイ役の人は演技が上手で、キム役の人も自然ですてき。セットや音楽もすべてかわいい。
アーティスティックな優れた映画というのではないけど、ずっと見ていたいような、見ているだけでハッピーになってしまうような映画です。こんなに主人公2人が幸せに結ばれることを願いながら見た映画はこれまでありませんでした。2人が、心から幸せを願ってしまうくらい愛らしく、応援したくなってしまうのです。

キムは、(最近の子は男の子でもきれいな子が多いから)最初は本当に男の子じゃないの?!と疑問に思うくらいでした。声と体つきは女性なので(胸は目立たないようにしてるけど)、女性なんでしょうけどねえ。インターネットで見たわずかな情報によると、彼女は実際に女性が好きな、男性っぽい格好をする女性なんですかね(タイではそういう人をtomboy<トムボーイ、英語で「おてんばな女の子」の意>と呼ぶそうな。映画でこの語がキーワードとして使われる)。
あんな笑顔で、あんな目で見つめられて、あんなふうに優しくされて、あんなに好きになってくれたら、もう性別なんてどうでもいいと思って好きになっちゃうだろうなと思いました。笑顔や仕草や話し方がかわいい&かっこいい♪

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主人公2人の声と話し方がかわいいせいか、タイ語の発音の美しさにも魅了されました。ちょっとタイ語を勉強してみたいと思ってしまいました。中国語よりさらに発音も文字も難しそうだけど……。でもあんな音楽のような美しい音が作れるようになるならねぇ……、努力もできる?!

大学の寮がとてもきれいなことにびっくり(熱帯地方だからゴキブリは出ますが……)。女子大生の髪型、化粧、服装が日本のそれとそっくりなのにも驚いた(彼女たち、観光客が行くような寺院には行かないんだろうなあ、あの露出具合から判断すると・笑)。
主役のパイなんて、ゆるやかな内巻きの長い茶髪に、胸の開いたノースリーブとかにミニスカートやショートパンツ、素足にヒールのあるサンダル、と日本の女の子のモテスタイル(?)的。日本人も好みそうな超かわいい顔をした女優さんなので、日本でも知られたら人気出そう。
話に聞いていた通り、タイは大学でも講義を受けるときは制服なので、そこは日本と違いましたが。キムは農学(?)専攻、パイは水産(??←魚類を研究している)専攻で、背景的に映る授業の様子も興味深い。「名門」大学という設定だけあって、設備がよさそう。

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主役2人以外は、わりとステレオタイプ的に描かれている登場人物が多いかもしれないけど、それぞれに魅力的でしかもおもしろい。

英語タイトルがおそらく原題の直訳なのかと推測され、このYes or Noが作中で要となっているのですが、日本語タイトルの「ジェリーフィッシュ」は、英語のjellyfish=クラゲということでいいんですかね? なぜクラゲなのか私にはわからないのですが、同性愛と関連付けられることがあるのでしょうか。映画を見る限り、パイが自分の好きな熱帯魚(あるいは魚)の中には同性同士で仲良くするものがあると語り、ラストでは、「ファイティングフィッシュ(熱帯魚の「闘魚」)はメス同士で生殖する」(?)とほのめかすような台詞が出てくる(←日本語字幕によると。魚に関する知識がないので、真偽のほどは不明)ので、「トロピカルフィッシュの恋」(tropical fish=熱帯魚)でもいいのでは、と思いましたが。

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「女だから/男だから好きになる」のではなく、「その人だから好きになる」という、ストレートなメッセージが伝わってくる。主人公2人が10代という設定のおかげで、そういう純粋さが無理なく描かれています。好きなら本当に性別は関係ないのではないか、と。しかも、この先ずっと一緒に生きていく、ということを見据えたラストになっているところがよい。

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日本で一般公開してもきっとヒットします! 一般公開して、ぜひ日本版DVDを販売してほしいです。
製作者は、同性愛でない人も見やすいように作ったのだと思うし、実際そうなっています。映画祭の観客の女性たちも「よかった」と言っていました。

タイの公式サイト(タイ語のみ)はこちら

こちらで、英語字幕付きの映画前半を見られます。たぶん、製作・配給会社か何かがサンプルとしてアップしているもので、画面の上半分に常に文字が表示されていますが、画質はきれいです。ほかにも、映画全体を英語字幕付きで見られる動画を見つけられるかもしれません……(大きな声では言いませんが)。

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by cathy_kate | 2011-07-24 23:52 | 第五幕 映画
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