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本、展覧会、映画、ダンス・演劇のパフォーマンスなど。文学、美術などの芸術、ヨーロッパ、英語に加え、フランス語や中国語、およびその文化にも興味がある。
by cathy_kate


『イメージ 視覚とメディア』 ジョン・バージャー著

イメージ―視覚とメディア (ちくま学芸文庫)

ジョン バージャー / 筑摩書房


原作:‘Ways of Seeing’ by John Berger (1972)
伊藤俊治訳

イギリスBBCの連続テレビ番組 ‘Ways of Seeing’(見る方法)を書籍化したもの。

古い本ですが、人が絵などのイメージを見てどう受け止めるか、
20世紀の広告が古典的な絵画のイメージをどう利用し、それが人々の物の見方に
どう影響しているか、といった普遍的な内容を扱っているため、
今でも読む価値が十分にあると思います。

写真、映画・映像、そしてインターネット、バーチャル空間といった
時代ごとに登場する「メディア」が深く関わる問題ですが、本書には
訳者による論考が付いており、ネットなどの環境を考慮したその論によって、
バージャーの論が補足されている。

複製画を「本物」と同じ、「本物」そのものであると捉えて論じてしまうこと。
油彩画に「描かれたもの」は、それを所有するという満足を、絵画の所有者に
与える機能を持っていたこと。
広告言語が絵画言語を利用して、人々の欲望を刺激し、人々は現状(現実世界)に
常に満足できない状態に置かれること。
かつては五感を使って現実を認識していたのが、今は「視覚」のみで知覚して
しまうことの危険性。

などなど、以前からよくいわれていることもありますが、
あらためて認識しておくことが大事なことばかりだと感じます。
300年前の絵画を、300年前の人と現在のわれわれは、同じようには見ていない。
ヨーロッパと東アジア、といった地域の差を別にしても、時代の隔たりは大きい。

現代は、バーチャル空間において、視覚と聴覚のみならず、触覚、味覚、嗅覚も
「体験」できてしまいそうな時代です。
「視覚」が肥大化したような知覚世界、なんだか怖いなー。

SNSで人との「つながり」が築けると錯覚してしまいそうな現代において、
「生の付き合い」の大切さも見直されてきてはいますが、その生の付き合いも
あまり表層的だと寂しいもの?!なのかもしれない。

インターネットによって一人一人が関われる世界が格段に広がったということは
確かで、まあまあ若いころからデジタル世界で生きてきたにしてはその恩恵を
活用しきれていない私のような人は、もっと現代的なツールを使いこなせた方が
いいのでしょうが(笑)
by cathy_kate | 2014-11-22 13:29 | 第一幕 本
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