本、展覧会、映画、ダンス・演劇のパフォーマンスなど。文学、美術などの芸術、ヨーロッパ、英語に加え、フランス語や中国語、およびその文化にも興味がある。
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『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治著
昭和44年に改版初版として発行されている角川文庫の「賢治童話集第3」。
11編を収める。たぶん読んだことのない作品が大半だった。 表題作「銀河鉄道の夜」は読んだことがあったが、この作品を含め、宮沢賢治の作品の多くがいわば「未完」ということは意識したことがなかったなあ。あまりに有名なせいかな。(カフカも有名だけど、生前きちんと刊行した作品はあまりない?ものね) あと、「仏教色」についても特に考えたことはありませんでした。というか、あまりきちんと読んだことがなかったのかも? 「よだかの星(ぶとしぎ)」も、有名だからと昔、書店で立ち読みしたくらいだったのですが、いや~、立ち読みなんかで済ませるべきではありませんね。失礼しました、って今回思いました。「泣ける」とかって本のキャッチコピーに書いてあると、「どこが? 憐憫っぽくてなんだかなあ」なんて思っていましたが、全然そんなことはなかったです。最初からずっと泣きそうでした。憐憫といえば憐憫、とにかくかわいそうなんです。でも完全に他人事とはとても思えず、「私は完全に勝ち組、挫折っていう言葉の意味がわからなーい、周りなんて何にも見えてないの、関係ないし!」とかいう一生を送ってきた人以外は、誰しも胸をつかれるものがあるのではないでしょうか。最後は結構勇ましく、悲観的にはならないしね。こういう惨めな気分は過去に置いてきましたが、それでもじーんとくるものがありました。 「銀河鉄道の夜」は意外と教訓めいたところが一部の場面で強かったです。でも、「ああ、失くしたものを埋めて生きていくのはそういうふうにするしかないのかな(著者の中では)」と思いました。そのわりに、最後のあっさり感(でも深いんですけど)が好きです。 描写も今回じっくり読んでみたら、とても豊かで、どこまでもイメージが広がっていく感じ。いいですねえ。 文章のリズムもすごく独特。個性が際立っています。でも一方で、生前にすごく評価されたわけではないのもわかる気がしてしまう。 一応「童話」って呼んでるけど、本当の子供にはなかなか「?」なものが多いかも。小学校のとき教科書に載っていた「やまなし」(本書には収録されていない)はかなり好きでしたが。
by cathy_kate
| 2011-06-13 23:26
| 第一幕 本
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